1998年12月29日(火)
パプアニューギニア 5日目 (クンディアワ 2日目)


 山奥での朝の目覚めは、まるでキャンプに来た気分でした。 ギグマイはまだ眠っています。 いつも朝は遅いようです。
納屋の屋根の上です
こういうのを、トクピシンで「man belong sleep」というそうです。 朝は、現地の人たちに、散歩に出かけよう、と誘われたので行くことにしました。 都会のポートモレスビーとは違い、ここら辺ではすることも限られています。 特に予定があるわけでもないので、ま、こんな感じです。 唯一の観光というと、近くに4000m程のマウントウィルヘルムという山もあるのですが、この季節は道が沼状態になっていて危険だということでした。 散歩の途中、車の話になりました。 パプアニューギニアの人々は日本人を見つけると、すぐ、自動車の話をします。 日本では自動車が安く売られている、というのが一般常識になっているようでした。 確かに、パプアニューギニアでの値段を聞いてみると、それは、日本人からしてもべらぼうに高い値段ではありました。

かわいらしい少年たち

 歩いてる途中で気付いたのですが、足のくるぶしの所に少しの傷がありました。 ここに、何匹ものハエがたかってきているのです。 よく見ると、最初の頃の傷の大きさより、だいぶ大きくなっています。 ちょうど、テレビでよく見るアフリカの貧しい子供達の傷口にハエがたかっている、まさにあの状態です。 傷口は隠した方がよさそうです。

お尻が破れてますよっ

 戻ると、ギグマイが起きていたので、しばらくして、市場へ行きました。 道すがら珍しい果物をくれたりする人もいます。 市場は、「えっ、これが市場?」というほど小さいものです。 フリーマーケットの1軒よりももっと小さなお店が広場にパラパラっとあるだけです。 昼過ぎだったので、朝早くとかに来るともっと賑わっているのかも知れません。 なぜか、竹馬をしている少年もいました。

 この市場で、サトウキビを購入しました。 こちらの人はサトウキビをジュースジュースと言って食べます。 食べるというか、しがんで水分を取るので、確かにジュースなのかも知れません。 そして、この食べ方がなかなか難しいのです。
おいしいサトウキビ
道具は一切使わずに、全部歯で剥いてしまうのです。 最初は全然うまくいきませんが、ちょっと慣れると、そこそこ出来るようになります。 しかし、普段使わない筋肉を使ってるのか、慣れないことをしているからなのか、顎がだる〜くなってしまいました。

 それから天気がいいので、風呂に入りに行きました。 そうです。 食器を洗ったりするのと違う方の川です。 いくら赤道直下とはいっても、標高2000m以上の高地は涼しいです。 天気のいい日でないと風呂には入れません。 風呂は、岩場の上の方にあります。
後ろのくぼみがお風呂です
滝のようになっていて、その上に少しのくぼみがあります。 そこで、体を洗うのです。 冷たくて気持ちいいです。 でも、ちょっと冷たすぎる気もします。

 家に戻ると、長老が僕に話しかけてきます。 なんでも、息子(?)が僕の荷物を触っていたので、何も盗まれてないかチェックした方がいい、ということでした。 ざっと、調べたところ、特に何も盗られてはいませんでした。 その人に限らず、どうも、たばこを一本とかそういうレベルで、ちょこちょこ盗みを働くらしいのです。

ドム語の調査中

 そもそも、このあたりは元々、自給自足で生活していました。 物々交換で生活する世界です。 ところが、そこに、町が出来、スーパーが出来、お金という物が入ってきました。 タオルや毛布なども買えるので便利になりました。 しかし、その反面、タオルや毛布を買うにはお金がいるのです。 彼らのいるのは、お金という物の流通しない世界です。 自分の畑で取れたものと、近所の人の物とを交換すれば生活できたのです。 だから、基本的にはお金を作る手段がありません。 畑でコーヒーを栽培して売る、というのは正当な方法です。 中には、他人の土地の道路をせき止めて、通行料を徴収する、なんてこともあるようです。 こうなると、文明という物が、いいものなのか、悪いものなのか、よくわかりませんね。

 この日の夜はギグマイは言語調査でした。 彼は、ドム語という言葉を研究しています。 約700種類あると言われているパプアニューギニアの言葉の中の一つで、このあたりで話されている言葉です。 つまり、トクピシン(ピジン英語)は共通語で、各民族それぞれ固有の言語を持っているというわけです。
いろりです
ドム語の話者は約5万人くらいです。 言語学者という立場でドム語を研究している人はまだいないので、彼が世界で最初のドム語の研究者ということになります。 これは、僕たちが教科書を見ながら英語を学ぶようなのとはわけが違います。 そもそも、母音がいくつあるのか、子音はいくつあるのか、というところから調べていかないといけません。

 彼は、村の人々にドム語で民話などをMDに吹き込んでもらい、今度は、それを再生しながら、IPA記号かなんかで書き取り、トクピシンで意味を確認する、という作業を繰り返していました。 何もかもすべてを一から調査しないといけないので、これは大変な作業だと思いました。

 こうして、夜は更けてゆきます。 結構みんな、遅くまで起きています。 おやすみなさい。

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